宮部みゆき作品

久しぶりに宮部みゆき作品2作を読みました。
先ずは「火車」。多重債務問題を最初に本格的に描いた宮部の初期の傑作。読むのは今回が二度目ですが、その後社会問題となり、最近になってグレーゾーン金利が廃止されたのは記憶に新しいところです。多重債務による自己破産、そして戸籍まで入れ替わって別人になろうとする主人公が痛ましくもあります。宮部はこの作品で、この多重債務問題を懇切丁寧に説明し、それがもたらす悲劇を見事に描きました。間違いなく傑作であり、直木賞受賞作「理由」よりもはるかに優れた作品だと思います。
もう一冊は「名もなき毒」。逆玉の輿に乗ったような主人公杉村が、何となく犯罪捜査に絡んでいく話ですが、焦点がいまひとつはっきりしません。何を言いたいのか?原田いずみという、どうしようもない嘘つき女を描きたいのか?それとも貧乏から抜け出せない、どうしようもなく不幸な青年を描きたいのか?それとも夫婦愛、家族愛を描きたいのか?
宮部作品、特に最近の現代ものにはいまひとつ引き込むものがないような気がします。
今日はこの辺で。