重松清「その日のまえに」

重松清の「その日のまえに」読了。7編の短篇が収められていますが、実際には「その日・・・」関係が3篇なので、5編の短篇。いずれも「死」をテーマとした話。そして前の4編が最後の「その日・・・」にそれとなく出てくるのが、さびとして効いています。
大林宣彦監督作品が上映されていますが、映画はあんまり評判がよくないと言うことでまだ観ていませんが、小説を読むとやっぱり見たくなります。
ひこうき雲」は病気で重い病気で入院した嫌われ者の少女を見舞う小学校6年生の同級生たちの話。死は小学生にとっても重い何かを記憶にとどめます。
「朝日の当たる家」は、夫を随分前に亡くした女の教師とかつての教え子の切ない話。教え子はたくさんの事情を抱えているが、教師は悩みながらも最後はきっちりと言ってくれました。
潮騒」は癌で余命3ヶ月を宣告された40歳ちょっとの男が、小学校の2年間を過ごした町に立ち寄り、小学生のときに死んだ同級生を思う話。死を裂けられなくなった男のやるせなさがひしひしと伝わります。
「ヒア・カムズ・ザ・サン」は、母一人子一人の家族の、その母が癌にかかってしまった二人の苦悩。甘ったれの高校生が母を思う気持ちは何よりも大きく、そして母が子を思う気持ちも何にも劣らず大きい。それでも死は待ってくれないつらさ。
「その日の・・・」は三部構成。夫婦と子供二人の幸せな家族。そんな幸せ奪ってしまう母の病気。余命1年は結局半年しか持たなかった、でも貴重な半年が・・・。
「その日・・・」では、「ひこうき雲」で小学生だった山本さんは看護師で登場し、「朝日のあたる家」の江口君は夫婦がかつて住んでいたアパートで暮らし、「潮騒」薬局ご主人は花火大会を開催し、「ヒア・カムズ・ザ・サン」の高校生はお母さんを看病し、でもそのお母さんもなくなってしまいました。
重松清の「死」の描き方の巧みさ。また涙が止まりませんでした。
今日はこの辺で。