白石一文「心に龍をちりばめて」

白石一文の「心に龍をちりばめて」読了。白石の作品には必ずと言っていいほど福岡が出てきますが、この作品も東京と福岡が舞台。美貌の女性、主人公の美帆が、二人の男性、一人は当代での新聞記者で代議士を目指す身勝手な男と、幼馴染で、やくざから足を洗った人情味のある男を相手に、心を揺るがす物語。
兎に角この小説で強調されるのが、美帆の美貌。歩けば必ず男が振り向くほどの美貌を持つ美帆ですが、この美貌ばかりを価値尺度とされることに不快感を持っている。新聞記者の男の両親にそのことで啖呵を切るところは痛快ですが、しかし、彼女自身、この美貌で世間を渡ってきた部分は多分にあることでしょう。
そんな彼女が、「シャブマン」とやらを求めて、やくざ上がりの男に身をさらす場面の意味があまりよく分かりませんでした。
結局、美帆は自分の実の母親と同じように私生児を出産しますが、幼馴染の男は既にこの世にはいないことを案じさせるラスト。
面白いようで、とらえどころの無い小説でありました。
今日はこの辺で。