重松清「小さき者へ」

昨日の日曜夕方、遠方での朝礼参加のため前泊。前泊地は栃木県の黒磯。新幹線が那須塩原駅停車となったため、黒磯はローカル線駅。日曜の夜からかもしれませんが、夜7時に駅を降りて、駅前のメインストリートを歩くと、そこはまさに閑散。数件の商店が開いているに過ぎず、夜の早いこと早いこと。確かに車社会とはいえ、地方の、特にかつての駅前商店街の寂れようは目を覆うばかり。郊外型ショッピングセンターだけが賑わう地方都市の変化にはストップがかからないものか。
重松清の「小さき者へ」。表題作他5編の短編小説集。どの小説も夫婦、親子、学校生活のほろ苦い人間関係が綴られています。
表題作「小さき者へ」。重松が度々取り上げるいじめや家庭内暴力の話。息子のいじめられと引きこもり、親のリストラ、会話のない親子。暗くて救いがないような話に読んでいる方も暗い気持ちになってしまいます。この家族に未来はあるのか?最後でやっと希望のようなものを感じさせてくれますが。
「青あざのトナカイ」。脱サラの事業に失敗した男の挫折と惨めさ。妻や子供にその惨めな姿や気持ちを見せたくないという思いがひしひしと感じられます。辛いでしょう、だけどこのまま負け犬では終わってほしくない。今の日本を象徴する話かもしれません。
「団旗はためくもとに」。かつての大学の応援団長とその娘の確執。娘が高校を中退しようと思っていることに大反対の父親。当然でしょう。私の子供がそんなことをしようとしたら、本当にぶん殴るかも知れません。でも、娘はやっと自分のしたいことを見つけて、父親も納得?
子供は息子も娘も一緒で、なかなか扱いにくい生き物であることは間違いありません。
他に「海まで」、「フイッチのイッチ」、「三月行進曲」。それにしても重松は、家族を書かせたら並ぶものがいません。
今日はこの辺で。