江上剛「腐食の王国」

昨晩は鬼怒川温泉で会合があり、温泉に一泊。風邪気味で調子が悪かったのですが、あったかい温泉に三度も入り、風も直ってきた感じ。やっぱり温泉は最高!!!

江上剛「腐食の王国」読了。上下間で680ページに及ぶ長編。言うまでもなく銀行小説家ならではの銀行物。バブル経済の少し前から最近の金融危機までの18年間を、とある都市銀行の頭取に上り詰めた男にひたすら仕えた部下を主人公とした、銀行の暗部を描いた物語。
東名銀行という架空の名前を使った銀行を舞台。さすがにこの東名銀行からは、実際の銀行名が浮かんできませんが、その他の銀行については、実際の銀行に似た名前を使い、かつ実際に起きた事件や事象を正確に伝えているので、特定できてしまいます。したがって、ここ十数年の金融機関の栄枯盛衰が手に取るようにわかる、ドキュメンタリーともなっています。
作品自体に重みがあるわけではありませんが、作者は何とか銀行の歩んだ激動のこの十数年に、それにふさわしいドラマチック性を持たせるために、無理な設定を組み、かえって非現実的な世界が浮き上がってしまった間がぬぐえませんが、こんな銀行のトップが実際にいたのかどうか?
さて、東名銀行はどこがモデルなのか?最初東名=東海道東海銀行と思ったのですが、東海銀行は後で出てきました。結局、最後の方で金融庁の監査で隠蔽工作が見つかり、最終的に東京三菱と合併した三和銀行が妥当な線でしょうが、東京が本拠ではない点が該当せず。要するに合併を繰り返す都市銀行すべてに当てはまるような銀行として捕らえるべきなんでしょう。
今日はこの辺で。