朱川湊人「いっぺんさん」

朱川湊人「いっぺんさん」読了。表題作のほか全部で8篇の短編小説集。朱川の得意とする摩訶不思議(お化け的)な作品群ですが、私は「いっぺんさん」と「山から来るもの」が印象に残りました。
「いっぺんさん」は一生に一度だけ望みをかなえてくれる祠にお参りした後の出来事を心温まるストーリーに仕上げています。白バイの運転手を夢見た友達が死んでしまいますが、その死んだ友達が白バイに乗って現れて弟を救うと言う摩訶不思議な話ではありますが、心がジーンと来て、目頭が厚くなりました。
そして「山から来るもの」は、餓鬼を見たものの周辺に不幸が起こるという言い伝えが現実になってしまう話。どこにもいる場が無いと思う少年が、田舎のおばあちゃんのところに来て、不幸をもたらしてしまう恐怖。この作品の中で最も怖い作品でした。特に、やさしかったおばあちゃんから「どうしてここに来たの」と言われる残酷さ。
その他の作品も不思議な魅力のある短編集でした。
今日はこの辺で。