唯川恵「今夜は心だけ抱いて」読了

表題作を読み終えました。これを読み始めるとすぐに思い浮かんだのが東野圭吾の傑作「秘密」です。「秘密」を読んだことがある人は、どなたもその設定の近似性に感ずかれるのではないでしょうか。母親と娘の精神が入れ替わってしまうと言う設定は、”東野を真似た”とは言いませんが、あまりにも似た設定です。違うのは事故があったときに、「秘密」は片方が死んでしまうのですが、唯川作品は二人とも生き残り、生き残った二人の心と体が入れ替わった状態で二人の同居生活が始まるところです。その共同生活で巻き起こる出来事は、さすがに直木賞作家だけあってうまく描かれていますが、最後に記憶が失われた娘の美羽が、本当は記憶を取り戻していたのではないかと思わせる部分も、東野作品に似ています。東野がクレームを付けたと言う話は聞いていませんが、何となくすっきりしません。
と言って、この作品がつまらない作品だったと言うことは全くありません。読みやすい文体で結構楽しめました。
今日はこの辺で。