重松清「送り火」再読

重松清の短編小説集「送り火」を再読しました。恥ずかしいかな、最初は初めて読む小説かと思って図書館で借りたのですが、読み進むうちにかつて読んだことを思い出した次第です。最近の物忘れのひどさには自分であきれてしまいますが、読んだ小説の題名も中身もすぐに忘れてしまいます。数年前に読んだことを思い出すうちに、損したかな?とも思いましたが、いい小説なので読み進めました。そしてやっぱりいいなあと思いました。
表題作のほか、全部で9編の短編ですが、どれもみな心に訴えるものがある、すばらしい小説でした。9編とも設定が新宿をターミナルとする私鉄「富士見線」沿線の人たちの話で、その富士見線がおそらくは私の住む京王線と想像できるため、余計に親近感を持って読めました。
最も私が良かったと思ったのが「家路」です。妻としっくり行かなくなった中年男が離婚を前提に家を出て別居し、ウィークリーマンションのある笹原駅笹塚駅かな?)のホームで幽霊と話をするストーリー。その幽霊は笹原駅のホームで急死した佐々木さんと言う方ですが、彼が語る家族や家というものに考えさせられました。サラリーマンが朝「行って来ます」と言うのは、夜「ただいま」と言って帰宅し、「お帰りなさい」と家族に言われるためなのだと。
私などはまともに「行って来ます」も「ただいま」も言わないのですが、妻はいつも「行ってらっしゃい」、「お帰りなさい」と言ってくれます。家族とはもっとコミュニケーションをとって、大切にしなければいけないと教えられた思いです。
今日はこの辺で。