浅田次郎のうまさ

今日からまた新しい週が始まりました。また頑張って日記をつけよう。
久しぶりに浅田次郎を読みました。タイトルは「霧笛荘夜話」。読了感は最高の一言。浅田次郎は、彼が「鉄道員」で直木賞をとった時から読み始め、図書館で借りられるものはすべて読みました。「プリズンホテル」のハチャメチャな楽しさ、「鉄道員」のいくつかの短編の情緒、「蒼穹の昴」や「珍姫の井戸」の悲しさ、そして何といっても「天切松闇語り」の痛快さと人情、何を読んでも決して読者を裏切らないその筆致には、いつもうならされます。
そして今回読んだ「霧笛荘夜話」もすばらしい短編集でした。この小説のシチュエーションは「天切松闇語り」にそっくりですが、どちらも人間にとって大切なものを暗示してくれています。
私が特に感動したのは第4話「瑠璃色の部屋」と第7話「ぬくもりの部屋」です。
前者はプロのミュージシャンを目指す四郎の話。彼と足の悪い姉とのエピソードには泣かされます。薄幸の姉弟愛というのは本当に絵になります。「天切り松闇語り」第1巻にも松と薄幸の姉の話があり、涙が止まりませんでしたが、浅田次郎は本当に泣かせるのがうまい。両方とも姉は死んでしまいますが、私は自分を犠牲にしてまで弟や家族を思うお姉さんの姿を、なんとも切なく思ってしまいました。
そして後者は、霧笛荘が地上げの対象になり、不動産屋が金で住人を立ち退きさせようとする話。住人6名と大家さんは大金を積まれても出ようとしない。みんなその日暮らしで裕福ではないが、それでも金では動かされないのです。ほりえもんに代表される「金がすべて」的な現代の風潮を痛烈に批判するメッセージが込められています。金には不自由しているが、それよりも大切なものがあることを読者に教えてくれるのです。ぜひ皆さんにも読んでほしい1冊です。
なお、「天切松闇語り」は既に4巻出ていますが、これも是非読んでみてください。また、これは芝居(ミュージカル)にもなっており、昨年暮れに紀伊国屋サザンシアターで公演を見に行きました。左トン平主演で、原作の味を十分に引き出しており、なかなか楽しい芝居でした。その公演には浅田次郎本人が観劇に来ており、余計に盛り上がりました。
浅田次郎の次なる新作を期待します。