米澤穂信「儚い羊たちの祝宴」

米澤穂信のミステリー作品「儚い羊たちの祝宴」読了。良質なミステリー短篇が5編納められた作品で、米澤ワールドが展開します。いずれも「バベルの会」という大学の読書会に関係する登場人物が登場する連作の趣もありますが、話自体はすべて単独で関係性はありません。
「身内に不幸がありました」は、孤児院にいた5歳の少女が資産家である丹山家にひきとられ、そこのお嬢様の世話係となり、お嬢様を慕うようになります。そんな資産家の家庭には、お嬢様の兄がいますが、彼は親から勘当されるような人間。そして、この兄や叔母さんたちが次々に殺されていきますが、はたして犯人は・・・・・
「北の館の罪人」は、これもまた資産家の六綱家が舞台。六綱家の妾腹ながら、貧しく母と暮らしていた主人公が、母の死を契機に行くところがなく、六綱家に行きそこの北の館に住むことに。彼女は、六綱家の長兄の世話する役目を果たすが、彼女の魂胆はいかに。
「山荘秘聞」は、山奥の別荘に魅せられてそこの管理人になった若い女性が、客をもてなすことを唯一の楽しみとして、雪山で遭難し、別荘にやってきた学生と、彼を探す人たちをもてなすことに。もてなしたいためにとった、その異常な行動とは。
「玉野五十鈴」の誉れは、資産家の小野家の一人っ子の女性が、実権を握る祖母に後継者としての指南を受け、彼女も当然に家を継ぐと思っていたのが、ある事件をきっかけにして、祖母から疎外されていく。玉野五十鈴は彼女の世話係。主人公の跡取り娘は、いつか玉野五十鈴がなくてはならないような存在になっていき、玉野五十鈴も最後に彼女を救ったのか。
「儚い羊たちの晩餐」は、祖父の遺産を継いだ父親が、若い女性料理人を雇い、客を呼んだ晩餐会でその料理人が腕を振るう。料理人の買う食材の量は、実際に出される料理に比べてとてつもなく多い量。父親は次第に料理人を疎ましくなり、料理に難題をつけるようになる。父親の娘が思いついたのが「アミルスタン羊」を使った料理。料理人はその意味を理解して食材を探しに行く。ここで最後に出てくるのが「バベルの会」の蓼沼で行えわれる読書会。世にも恐ろしいお話でした。
今日はこの辺で。