西日本新聞編著「水俣病50年」

水俣病関連書籍の読書「水俣病50年-過去に未来を学ぶ」読了。
水俣病公式確認から50年目の2006年、西日本新聞社が新聞連載した水俣病に関する連載記事をまとめた本書は、患者側からだけでなく、原因企業であるチッソや行政からの目線も交えて、多角的に公害病の原点である「水俣病」を描いたところに特徴があり、今まで読んだ本とはまた違ったおもむきのある作品。
患者側から見るときわめて悪質で悲惨な事件ではあるが、水俣市人口に占める患者数は圧倒的に少なく、その悲惨な実態が知られていないこと、ほんの一部の漁民で貧困な家庭のことで、知名度が小さかったことがよくうかがえます。
特に50年目の市民へのアンケートでは、「水俣病」という病名を変えた方がいいという市民の比率が存続派よりも大きいという結果も出ています。また、1995年の政治決着で水俣病問題は決着したと認識した市民も多かった結果も出ています。
水俣病という負の遺産をこれ以上背負いたくないという市民の感情が現れている典型でしょう。新潟阿賀野川流域で発生した同病が、新潟水俣病と呼称になったことからも、水俣病は、単なる有機水銀中毒症ではなく、あくまで水俣病として残ってしまったのは、ある意味不幸な病名になったとも思われます。「チッソ病」とでも名付ければ全国に散った水俣市民に負の遺産を背負わすこともなかったかもしれません。
以上のような、多角的な取材に基づく貴重な著作であり、水俣病の過去未来を読み解くには絶好の作品と感じました。
今日はこの辺で。