映画「サウルの息子」

ハンガリーの監督によるホロコースト映画「サウルの息子」をシネマカリテにて鑑賞。
ホロコーストの映画は繰り返し繰り返し作られ、私もいくつか見てきましたが、今日観た作品は一味違った作品。ユダヤ人の強制収容所の中で、ユダヤ人自身もドイツ軍の手先となって収容者をガス室に誘導していたこと、そして彼らもまたいずれはガス室に送られる運命であったこと。
そんな状況下で、ドイツ軍の命令に従い、収容所に送られてくるユダヤ人たちをガス室に誘導していく主人公が、ガス室で生き残った少年を自分の息子と思い、何とかユダヤのしきたりに基づいて埋葬させたいと考え、宗教者を捜し出し葬儀をして葬ることに執心する男をカメラが追います。
主人公のその男をカメラが写し、背景の残酷な場面はぼかすものの、それがまた残酷さを際立てる効果があります。子供を何とか埋葬すべく、肢体を担いで逃走するものの、追いつかれ、最後は銃声とともに詩を予感させる場面。
ホロコーストを国家の命令として何の疑いもなく実行した収容所のドイツ人。それを手助けせざるを得ないユダヤ人の一部の人間。
この映画は決して蛮人が評価する作品ではないものの、インパクトの大きな映画ではありました。
今日はこの辺で。