天童荒太「家族狩り(第1部)~(第5部)」

天童荒太「家族狩り(第1部)~(第5部)」読了。
「幻世の祈り」「遭難者の夢」「贈られた手」「巡礼者たち」「まだ遠い光」の5部構成の長編作。天童作品は直木賞受賞作「悼む人」に見られるように、家族や死についてをテーマとした作品が多く、残酷さの中に一片の優しさを求める人間の奥深い思いを描く作者として強く印象付けられます。
この家族狩り5部作は、そんな家族と死をとことん追い求めたような長編。読んでいて気が沈んでしまいそうな思いをさせられることもあります。
主人公が複数登場しますが、中でも馬見原という刑事は、読んでいるうちにとんでもない刑事で亭主だという思いを強くし、その奥さんはなんて可哀そうな人なんだろうと同情が強くなります。
これに対して巣藤という美術教師は次第に人間的に成長していく姿が描かれ、一片の望みを抱かせてくれます。最後の殺人犯人が分かるところは、若干無理があるところがありますが、天童作品の代表作といえるでしょう。
今日はこの辺で。