藤沢周平「暁のひかり」

久ぶりの読書感想。この間、本を読まなかったわけではありませんが、感想を書かずにきました。特に池波正太郎の「鬼平犯科帳」全24巻はかなり時間がかかりましたが読み終わりました。池波は鬼平犯科帳を「オール読物」に何十年も連載してきたとのことで、これだけでも大変な労力。そのすごさに感動です。話もシチュエーションを変えて、鬼平の魅力はもちろんですが、各回に登場する鬼平の家来や友人、家族、そして何よりも盗賊たちの個性が描かれ、飽きません。
今日読み終わったのは藤沢周平の短編集「暁のひかり」。表題作ほか全6篇の江戸の市井もの。どの作品も男が主人公で、そこに少女や女が絡んできます。時代物ではありますが、現代にそっくり置き換えてもおかしくない、どこにでもありそうな物語を淡々と描きます。
「暁のひかり」は壷振りの市蔵が足の悪い少女に出会い、ほのぼのとした交流がなされる。しかし最後は悲しい結末が。
「馬五郎焼身」は長屋の乱暴者、馬五郎の話。かつて女房と幼い娘と幸せに暮らしていた馬五郎は、女房が目を話したすきに娘が川に落ちて死んだことから、女房に辛く当り別居。そんな女房がいじらしく描かれる。
「おふく」は、御酒蔵の幼馴染の娘の名前。そのおふくがお茶屋に身売りされる。そんなおふくに何年かたって御茶屋に会いに行くが会えずじまい。御酒蔵は飾り職人からやくざに身を落としていくが、そんな中でおなみという女に会う。
穴熊」は、お弓という女を探していた浅次郎が、お茶屋でお弓と似た女に出会う。その女はどう見ても武家の妻。事情を探っていくと、浪人の妻で、子供の病気のために金が必要なことがわかる。浅次郎は、浪人塚本伊織に金儲けの話を持ちかける。
「しぶとい連中」は、博打打の熊蔵が親子心中しようとしている母と子供二人を引き止めたばっかりに、言えに居座られてしまう話。その母はなかなかの美人。一度抱いてしまったが最後、その女から離れられなくなり、金儲けの賭けに。
「冬の潮」は、息子の嫁を可愛がる舅、市兵衛のはかないはなし。息子が死に、未亡人となった嫁に金を渡して実家に帰すが、その嫁は水茶屋で身を売るまでに身を落としていた。何とか身請けしてまともな暮らしをさせたいと思うのだが。
今日はこの辺で。