重松清「十字架」

久しぶりで重松作品を読む。「十字架」は重松にしかかけない、彼の真骨頂。
いじめの話は、「ナイフ」や「きみの友だち」、「青い鳥」など、彼の作品にたくさん出てきます。今回もそのいじめの話がテーマで、「あー、またか」と思いつつ、ついつい読んでしまうのが彼のうまさ。
中学2年生のフジシュンと呼ばれる少年が、いじめを苦に自殺。その遺書には、いじめを行なった2人の名前と、フジシュンが親友と書いた少年、そして「ゴメンね」と名指しされた憧れの少女の4名の名前が記されていた。親友と記された少年と憧れの少女は、彼の死によって重い十字架を背負うことになるというストーリー。
この話には、決して前記した3作に勝るような要素があるわけではありませんが、彼の作品は何度読んでも飽きず、そのたびに泪を誘う要素があります。
フジシュンの父親は最後まで「あのひと」の表現で登場しますが、この抽象的な表現が、それだけで話にふくらみを持たせたような感じがあります。成人した少年と「あのひと」は最後どうなるのか?そんな興味を最後まで持たせました。その結果は読んでからのお楽しみということで。
今日はこの辺で。