藤沢周平「驟り雨」

藤沢周平「驟り雨」読了。藤沢作品に庄内の海坂藩などを舞台にした武士の時代物がある一方、江戸を舞台にした庶民ものもあり、この作品はその後者の部類に入るもの。庶民の中でも貧しい部類に入る人を主人公にした短編といっていいでしょう。
表題作ほか、全10篇の短編ですが、どれも味わいがあります。そして、時代物とはいえ、当時の大都会江戸を東京に置き換えれば、今でもたくさんあるような話が詰まっています。
「贈り物」のおうめ、「ちきしょう」のおしゅん、「朝焼け」のお品、「遅いしあわせ」のおもん、「捨てた女」のふき、「泣かない女」のお才。藤沢はけなげな女を描くのが非常にうまい。彼女たちはただけなげなだけでなく、芯が強い女でもある。ろくでもない男も出てくるが、結局、男はこんな女たちに帰ってくる筋書きが多く、読んでいて安心するのでありました。
今日はこの辺で。