熊谷達也「箕作り弥平商伝記」

直木賞作家熊谷達也の「箕作り弥平商伝記」を読み終えました。熊谷の小説の舞台はほとんどが東北ですが、今回も弥平の住まいは秋田の大平黒沢。その弥平が群馬で箕の行商をするのが主な話の筋。
熊谷作品に見られる東北人の深い人情がこの小説でも楽しく味わえます。箕作りの里大平黒沢で腕を磨いた人情深いの二十歳の弥平が、初めて経験する関東での、東北とは一味違った風土に戸惑いながらも、オキヌに対して恋心をストレートに訴えるところはほほえましい限りです。箕作りという職人芸が関東ではさげすまれる商売であるところにも納得できない弥平。
そして、部落差別と言う社会問題も織り込んで、熊谷が弥平を通して、真の人間の共同社会のあり方を問うているような小説に感じました。
今日はこの辺で。