小説二題

今週読んだ小説2作品。1つは倉橋康介「卑劣」。生命保険会社の卑劣な談合を告発したノンフィクション風小説。作者は元生保社員で、この小説通りであれば、日本の生命保険料の高さに憤りを感じてしまいます。どこまでが真実で、どこまでがフィクションなのか?あくまで小説なので、告発ではありません。保険料率がどうやって決まるのかについては、何となくこの小説にある「死亡率」である程度決まるのかなあとは思いますが、それを保険会社の保険会社が独自に決めても何ら問題ないとは思いますが、それを談合で決めているのかどうかは「?」。それにしても、「箪笥貯金」とはよく聞きますが、「箪笥保険」は初めて聞く言葉。確かに保険を掛けていたかどうかは、家族も知らないケースがあります。保険会社は自分から言う必要はありませんから、相当数の未払い保険金があるようには推測されます。くれぐれも保険に入っていることは家族に言っておくことにしましょう。
もう一作は新堂冬樹「背広の下の衝動」。4篇の短編小説が収録されていますが、「嫉」が秀逸の作品。セックスのコンプレックスがある主人公のサラリーマンが、魅力的な奥さんが浮気をしているんではないかと疑い、極大の嫉みを持つお話。愛しているがゆえに妻の浮気を信じ込み、ラストではそれが全くの誤解であったことに気づくのですが、後の祭り。包丁には既に大量の血が付着していたのでした。大変に恐ろしい話でした。
今日はこの辺で。