東野圭吾「さまよう刃」読了

久しぶりに東野圭吾作品を読みました。「容疑者xの献身」の1作前の単行本だったと思いますが「さまよう刃」です。設定は娘を拉致・暴行の末殺害・遺棄された父親の復讐劇に少年犯罪を絡ませたもの。シチュエーションはかなりありふれたもので、小説自体も東野作品としては評価が低かった作品です。確かに、この後発表された薬丸岳江戸川乱歩賞受賞作「天使のナイフ」に比べてもインパクトが少ないようには感じましたが、娯楽作品としては「さすがに東野」と思わせるものがありました。
少年法が改正され、従来の17歳以上から14歳以上の少年にも刑事罰が下せるようになったかと思いますが、依然として少年犯罪に関しては少年法の壁によって被害者側が満足するような量刑判決がくだらないのが現実と聞きます。そんな法体系の下で、泣き寝入りせずに自ら復讐する話はある種の快感を覚えます。ネタばれのため詳しくは書けませんが、最後に主人公が命を落とす場面は残念な思いが若干残りました。出来れば裁判劇まで本作に含めて描いてくれれば更に満足感が増したのではないでしょうか。それも思いっきり犯罪少年の量刑が軽くなってしまう展開になればインパクトは大きかったのではないか。
この小説で何度も出てくる「たとえ少年であっても決して更正しない人間がいる」という主人公の主張は果たして正しいのか?ここで描かれている菅野快児という少年は更正することが果たして出来るのか?真保裕一繋がれた明日」でも少年犯罪と更正がテーマでしたが、決して更正しそうもない少年が描かれていました。少年に極刑を下すことの難しさ確かにあるのでしょうが、何の罪もない被害者側の思いを思うと、極刑ありの判決もそろそろ出てもおかしくないとは思います。
山口県光氏の母子殺人事件の判決も間じかに迫ってきました。
今日はこの辺で。