重松清「卒業」レビュー

久しぶりの小説レビュー、直木賞作家重松清の「卒業」を本日読了。この作家も駄作がなく、期待を裏切らない人ですが、今回の作品もまた味わいがあり、今までで最高の作品にではないかと思いました。
4話の短編集ですが、いずれも人間の死とそのかかわりをテーマにしている人間小説です。このうち私が涙を流したのが「追伸」。今日朝の電車で読み始め、途中で思わず涙が出てきてしまいました。そして、帰宅してから最後まで読み終わりましたが、またしても涙。何に涙するのでしょう?主人公が幼いときに亡くなった生母とその後に来た義母。生母は主人公の少年にとっては正に聖母に様に優しい思い出ばかりが残る母であり、義母はがさつで無神経な母。そんな主人公が40歳近くなってやっと義母の優しさを知ると言う、なんとも泣かせる話でした。
4篇とも誰一人意地悪な人や悪人は出てきません。どちらかと言えばどこにでもいる普通の人たちの物語ですが、絶妙の筋立てで傑作に仕上がっています。私にもこんな才能があったらいいのに!なんて、ある種の嫉妬を覚えてしまいました。是非皆さんも読んでください。
今日はこの辺で。