池井戸潤「半沢直樹 アルルカンと道化師」

池井戸潤作品、それも半沢直樹シリーズを読むのは久しぶりとなりますが、相変わらずそのエンタメ精神は健在。本作「アルルカンの道化師」もまた、勧善懲悪スタイルで、半沢直樹が東京中央銀行大阪西支店の融資課長として、足元では浅野支店長、江島副支店長の妨害を受け、更に大阪営業本部と本店営業の悪だくみに逢いながら、最後はすべて勧善懲悪が貫かれる痛快時代劇長の銀行物語。

半沢は美術系の出版社を顧客に持つが、本店から大阪営本、支店長を通じてその会社のM&Aを実現せよと命じられる、しかし、その出版社はの社長は自立再建を求めており、半沢は徹底的に反対する。敵もさるもので、その出版社の2億円の融資に対して難癖をつけて邪魔し、半沢も一時窮地に立つが、担保物件を探すうちに、ある絵画とその画家との因縁を探り出し、本店営業の宝田をコテンパンにやり込めることに成功するという物語。

頭取がM&Aを積極的に商売にしていくという方針を馬鹿正直に受け止めて、本来の銀行業務である、融資先の経営を蔑ろのする獲得銀行員たちをやり込める半沢の姿は、正に時代劇の水戸黄門や遠山の金さんに近い爽快感を与えてくれます。

作品とはそれますが、今の日本の会社の30%以上が後継者不足などで近い将来廃業を考えているとの話を聞きました。ブラック企業は問題外ですが、地域の雇用に貢献している会社がなくなることは大きな損失でもあり、M&Aは決して悪いことではありません。経営者が納得の上で、従業員の雇用を優先するM&Aはこれからどんどん進めてもらいたいのですが、本作にあるようなよこしまな銀行の商売になっては本末転倒。半沢のような、取引先を大切にする銀行マンによるM&Aに期待したいものです。

今日はこの辺で。