米澤穂信「満願」

米澤穂信が2014年のミステリー年間ランキング3冠に輝いた短編集「満願」を読了。
私にとって米澤作品は初めての作品。こんなミステリーを書く作家がいたとは、己の鞭を恥じ入るのみです。
表題作ほか、全6篇が収録されていますが、いずれも読みごたえあり。
なんといっても、表題作の「満願」は秀逸。法律家を目指す主人公が学生時代に下宿した畳屋の若い奥さんが後に殺人罪で起訴され、その弁護を引き受けた主人公の弁護士。学生時代にはその奥さんに励まされ、お金がないときにも助けてもらったことから、罪を軽くしようとする。しかし、一審の8年の刑が確定し服役して、出所するところから話が始まるのですが、その下宿時代からの話が伏線となって、最後の推理に結びつくあたりは、何ともうまい構成となっています。
次の面白い作品が「関守」。伊豆の落ちぶれた道路でドライブインを営む老婆と、取材するライター。車の往来の少ない田舎の道路で、谷に転落した事故が頻発し、その話を老婆から聞くうちに、自分の身にも危険が迫っていることが最後にわかる恐ろしい話。これも非常に前段の派内が巧みで、まさかこういう結末があるとは、と感心しました。
「死人宿」は、かつての恋人で会った彼女を探し求めて、やっと地方の宿屋で働いていることを突き止め、彼女に会いに行く。その彼女は宿で働いていたが、その宿はたびたび死人が出ることで有名な宿。
彼女から風呂場で遺書を見つけたという話があり、だれが書いたのかを必死に突き止めることに。
「柘榴」は、二人の中学生姉妹を娘に持つ母親は、働かず、家にも帰ってこない夫との離婚を決意。離婚調停では当然自分が親権を獲得するはずだが、二人の姉妹は恐ろしいたくらみ?をした結果、親権が父親に。どうしてそうなったかは読んでのお楽しみだが、大変に恐ろしい姉妹であります。
「夜警」は、交番勤めの新人警察官が、あるトラブルに巻き込まれ殉職。その裏に隠されたその新人警察官の性癖とは。
「万灯」は、商社で天然ガス開発を手掛けるやり手商社マンが、バングラデシュで壁にぶち当たって事業が停滞。その壁となっている村の役人のような人を殺める話。この「万灯」だけは、紙数が多い割にいまいちインパクトがない(非現実的)でありました。
久しぶりにミステリーを満喫した次第です。
今日はこの辺で。