楡周平「国士」

楡氏が少子高齢化・人口減少の現代日本の再生を描いたシリーズ、「プラチナタウン」「和僑」に続く「国士」読了。

イカリ屋というカレー食堂のチェーン店のアメリカ進出を機に、創業社長である篠原が外部招へいした相葉に社長業を託すが、相葉は篠原が描く日本再生の一助となるシステム創造を無視して、目先の利益に走る構造改革をするところから、果たして企業経営とは何か、フランチャイズシステムとは何か、第一次産業の六次産業化は可能なのかなど、正に日本が抱える経済・社会的問題を取り上げた作品。

プラチナタウンや和僑の構想を実現した山崎の話を聞き、篠原は日本の一次産品の海外輸出の必要性を自覚、その構想の実現をイカリ屋のアメリカ進出に合わせて相葉新社長に託すが、相葉は目先の利益、ここではフランチャイズオーナーの生活を破壊してまでも人口集中都市での出店を推し進めるという強引な手法に突き進む。しかし、大株主で仕入れ先でもある大垣や大手商社マンの安住が、相葉の経営手法に反発し、篠原に相談して相葉に辞任の引導を渡すことになる。

最後は篠原ではなく安住と大垣が国士になっている構図が浮かび上がってしまうが、いずれにせよ、今のアメリカ式の短期利益追求への疑問を浮かび上がらせ、国内の農畜産漁業の再生と、加工品工場による雇用創出をうたい上げる楡周平氏の持論が展開されるような作品でした。

今日はこの辺で。