映画「家へ帰ろう」

珍しいアルゼンチン映画「家へ帰ろう」を下高井戸シネマにて鑑賞。題名からは想像できなかったのですが、異種のホロコースト映画。しかも非常に優れた映画でした。無駄な場面がほとんどなく、上映時間も1.5時間以内で、物語が凝縮しています。
アルゼンチン・ブエノスアイレスに住む88歳の老仕立て屋、アブラハムが、かつて住んでいたポーランドに一人で旅立ちます。住んでいたのは終戦の年の1945年まで。しかも彼はユダヤ人です。彼は、家族をすべてドイツ人に殺され、自身も住んでのところで脱出して、当時の使用人の家の友達に助けられる。そして伝手をたどってアルゼンチンに移住したのだが、別れる時の約束を果たそうと、最後に仕立てた服を命の恩人に渡すためにポーランドに向かう。まずはスペインのマドリードに行き、ホテルでお金を盗まれるものの、ホテルのフロントの女性や飛行機であった青年に助けられ列車でパリへ。パリからドイツを通らずにポーランドへ行く方法を訪ねるもそんな方法は飛行機以外にはなく、親切なドイツ人女性と会い、説得されて列車に乗車。ベルリンではドイツの土を踏まないように移動する場面も。それだけ、ドイツへの怨念が続いていたことを強烈に訴えます。列車では、過去の記憶が彼を襲い、倒れてしまう。気が付いたらワルシャワの病院。その病院の看護婦からも協力を得て、住んでいた町へ向かう。
それぞれのエピソードが笑いを誘って、暗いイメージはないが、彼の頭の中はドイツへの恨みと、かつての親友への思いで真剣そのものである。強制収容所の場面や戦闘場面が出てくるわけではありませんが、痛烈なホロコーストへの批判が込められた作品でした。