下村敦史「闇に香る嘘」

2015年の江戸川乱歩賞受賞作、下村敦史の「闇に香る嘘」読了。
盲目の高齢者を主人公に据えて、そこに中国残留孤児問題を絡めたミステリータッチの社会派小説とでも呼べばよろしいのか?
乱歩賞を受賞したとはいえ、賛否の残る作品かもしれません。
主人公がすでに60歳を超えた老人で、かつ40歳ごろに失明したという設定。彼は満州開拓団の両親の間に生まれ、終戦間際のソ連軍の参戦で命からがら日本に会えってきたという設定。逃避行時に、7歳の兄が川に流され、行方不明に。その兄が日中国交回復後の残留孤児帰国事業で帰国し、郷里の岩手で母親と暮らしています。主人公の孫が腎臓病となり、生体腎移植をその兄に頼むものの、兄は拒絶。検査まで拒否したことから、兄が本当に血縁の兄なのかどうかを疑いだし、主人公の悪戦苦闘の真相探しが始まるというストーリー。
盲目で高齢の主人公設定というのは、一種の冒険ですが、時代設定を考えるとやむを得ないのか。
盲目という設定を活かした場面設定が数多くあり、確かにありうる場面ではありますが、兄が縦横無尽に弟を守るために現れたりするところが非現実的の感が否めませんが、最後のどんでん返しは、気が付きませんでした。これだけで受賞した感も否めません。
直木賞でもミステリーが最近は受賞作が多くなっていますが、やはりレベル的には一段下がるといわざるを得ません。もちろん、乱歩賞作家が後に直木賞を受賞するケースもありますし、藤原伊織のように同時受賞もありますが、2015年に関しては低レベルなのかも。
今日はこの辺で。