朝井まかて「恋歌」

直近の直木賞受賞作、朝井まかての「恋歌」読了。朝井さんは初ノミネートでの受賞。こういう方もいらっしゃるから、賞というものは時の運なのか。
それにしても、作品自体素晴らしい秀作であり、歴史を学ばせてもらいました。
尊王攘夷を掲げ、井伊直弼が暗殺された「桜田門外の変」を起こしたのが水戸藩主であったことは何となく知っていましたが、その尊王攘夷を掲げた薩長明治維新政府をつくり、主要ポストを独占したのに対して、水戸藩出身者は確かに明治政府に名を残すような人材がいません。それもそのはずで、水戸藩自体が改革派と守旧派による血で血を洗う抗争を繰り広げていたとは、情けないことに私は知りませんでした。
江戸の旅館の娘に生まれた主人公が水戸藩士に嫁入りし、藩の内紛のおかげでひどい目にあうのですが、それでも愛した夫を一生思い続けるという話なのですが、長編小説として、また歴史小説として、水戸藩の隠れた抗争を題材として見事に描いています。
150回の直木賞芥川賞は受賞者3名とも女性作家でしたが、最近の両賞受賞作家を見ても、女性上位のようで、頼もしい限り。朝井まかてさんの次の作品にも十分興味を抱かせる、大器を感じさせます。
今日はこの辺で。