浅田次郎「一路」

昨年暮れから読んでいた浅田次郎「一路」上下巻をやっと読了しました。
とにかく、浅田次郎作品に駄作なし、稀代のストーリーテラーです。
舞台は幕末、安政の大獄後の時代の変革期にもかかわらず、いまだにに行われていた江戸幕府の大名政策「参勤交代」を題材にして、まったく飽きさせないストーリーが展開します。
どこまでが史実かは検証していませんが、浅田次郎は検証しているのでしょう。参勤交代は1万石以上の大名に課せられたイベントと思っていましたが、この小説では7,500石の旗本の参勤交代を描きます。
その旗本家内の、主君を貶めようとする陰謀をはらみながら、美濃から江戸までの行軍を、ある時は供頭(参勤交代の旅程を差配する役柄)を主人公に、そしてある時はお殿様を、さらには馬を人間に見立てて語らせるなど、エンターテイメント満載の内容で飽きさせません。
中山道の道中は私が生まれた信州長野の和田、望月、岩村田碓氷峠など、身近な場所もいくつか出てきて、親近感もわきました。残念だったのは、千曲川わたりの様子が出てこなかったこと。もし出てくれば、私の生まれた村の塩名田宿も舞台になったのではないかと残念。浅田先生、もう一度書くときは是非塩名田宿も付け加えてくださーい。
さて、参勤交代にはいろいろなルールがあって、特に宿泊する領内の大名へのあいさつは重要事。岩村田では城持ち大名になる若殿様に嫌がらせがあったかと思うと、松井田宿では、走ることをモットーとするお殿様に助けられと、エピソードが盛りだくさん。
昨年の時代小説の中でも屈指の作品との評価のある何とも楽しい作品でありました。是非とも一読をお勧めします。
今日はこの辺で。