映画「メイド・イン・バングラデシュ」

2022.08.03(木)下赤井戸シネマにて珍しいバングラデシュ映画「メイド・イン・バングラデシュ」鑑賞。資本主義においては、とにかく安く物を作り、顧客を獲得するという原理が働き、特にアパレル産業における縫製は、技術的な進歩はほとんど終了し、安い労働力の獲得が勝負。日本の高度成長期には日本の安い労働力がアメリカのアパレル産業を滅ぼし、その後日本も中国の安い労働力に凌駕された。そして今は、中国からベトナムベトナムからバングラデシュなど、より低賃金の国や地域を求めて製造の現場が移転していく時代。そこでは、主に女性や児童労働が低賃金で働かされて、生活水準もなかなか向上しない現状がある。本作は、そんなバングラデシュの縫製工場を舞台に、一人の女性が残業代ももらえないような工場で働きながら、何とか労働組合を結成して、経営者に立ち向かうべく奮闘する物語。

主人公の女性は23歳で、若い時から首都ダッカに出て工場で働く身。夫もいるが、失業中で彼女の収入が唯一の生活源。彼女は男性の管理職に文句を言うが埒が明かず、専門家に相談して労働組合を作り、団体交渉で待遇改善を目指すが、組合結成のための署名集めに苦戦、その間経営側からの執拗な嫌がらせを受け、同僚たちも尻込みするが、何とか所定数のサインをもらい、役所に組合結成申請にたどり着く。しかし、何処の国でもあるのが役所と経営者の深い繋がり。2週間で申請が認可されるはずが、役所はいちゃもん付けて認可しない状態が続き、ついに彼女は強硬手段に出る。このラストは痛快でした。

バングラデシュでも労働法が完備され、組合結成や団体交渉の権利があり、彼女が必死になって労働法の勉強をしていく場面がある。また、ラストの場面はスマホの録音機能が活用されるところは現代的。

いま世界中がインフレに襲われ、労働者の生活が脅かされている。インフレの最大の犠牲者は、やはり低所得層であり、発展途上国の労働者。労働組合結成率が日本では下がり続け、労組の存在感が薄れている中、もう一度労組の価値を見直すべき時代のような気がするのですが。

今日はこの辺で。