伊兼源太郎「残響」

伊兼源太郎の警視庁監察シリーズの完結編「残響」読了。第一作の「密告はうたう」第二作の「ブラックリスト」に次ぐ第三作。前作が完結していないシリーズなので、当然次作があるのは間違いありませんが、話が複雑になってくる一方で、読んでいる方は「こんな大物が黒幕だったのか?」と首を傾げる部分もあり、伊兼さんが最初から構想していたストーリーなのかがわからない?と私には感じたのですが。

第一作で同僚の斉藤刑事が何者かに殺害され、第二作では振り込め詐欺などの犯人と思われるブラックリストが流出し、リストの何人かが殺され、斉藤刑事が誰に殺害されたのかが第三作の焦点となりました。そんな途中で「国民生活向上法案」なる法律の成立を企む警視庁No2の副総監が登場し、彼がこの法律を通すために「私刑」を行う組織が警視庁内にあり、SNSで喝さいを浴びるなど、プロパガンダを企んでキャリア官僚としてのレガシーを作るために暗躍したりと、何とも忙しい小説になってしまいました。

警察官の不祥事を行動確認で調査し、不正を亡くす組織ながら、主人公の佐良、同僚で頼れる女性刑事皆口、能面のような表情を崩さない上司の能馬など個性的なキャラクターは最後まで生き残りますが、刑事部長はじめ何人かが死傷する血なまぐさい場面も多く、かつ前述のごとく話が複雑になったおかげで、第一作の「密告はうたう」の魅力が次第にそがれて行ってしまった残念な作品となりました。

今日はこの辺で。