伊兼源太郎「地検のS エスが泣いた日」

伊兼源太郎が、地検の検事ではなく、事務部門の総務課長を主人公として描く「地検のS」シリーズ第二弾「エスが泣いた日」読了。前作に劣らずハラハラドキドキの見事なミステリー小説になっており読みごたえ抜群の作品。前作も次回作ご期待の終わり方でしたが、今回も話は収束せず、第三弾が待ちどうしくなる形となり、地検のSこと、伊勢雅行の復讐は成就ならず。

民自党の次期党首候補で現厚労大臣の吉村泰二に母親と姉夫婦、名を殺された伊勢は、こんな男を決して総理にしてはならないとの思いで、転勤の多い検事にはならずに、事務官となり、吉川の地元選挙区の湊川地検の総務課長を務める。地検のSとは総務課長のイニシヤル。次席検事の快刀として人脈を築き、地検のみならず警察や吉川の法律顧問役の法律事務所にもエス=スパイを置き、吉川の動向の情報を集めている。本作のハイライトである「エスが泣いた日」とは。地検内の親友事務官である久保が吉川の手下に狙われ、殺されてしまう場面。もう一人心配なのが、法律事務所に送り込んでいるSが情報を盗み出すところを見つかってしまうが、この結果は次回作を見なければならない。果たして彼は生きているのか?心配なところ。

前回も書いたように、伊兼氏の筆致は横山秀夫の警察小説にそっくりで、私の好みに合うところが引き込まれる所以。伊勢雅之は久保を失い、法律事務所に送り込んだ菊池の消息も分からないが、久保が仕えた女性の相川検事、東京地検に出張中の八潮検事、総務課員の三好にすべてを話し、次回作ではどんな形で吉村を追い詰めるか楽しみである。

それにしても今作ではかなり血なまぐさい場面が登場し、あとどれだけの伊勢の同志が傷つくのかが心配でもあります。

今日はこの辺で。