原田マハ「旅屋おかえり」

原田マハさんの飛びっきりの人情小説「旅屋おかえり」読了。

主人公は、かつてアイドルとして売り出したものの、パットせず、今はテレビの旅番組「ちょびっ旅」の旅人をやってプロダクションを支えている岡えりかさん、通称“おかえり”さん。プロダクションは萬鉄壁社長と事務員の“のんの”さん3人だけで、おかえりさん一人が稼いでもっているプロダクション。そんな弱小プロで、5年間続いた旅番組がスポンサーの怒りを買って中止の憂き目にあうところから話が始まる。社長とおかえりさんは営業に歩くもののなかなか仕事がないところに、偶然にも「病気の娘の代わりに旅をして、娘を喜ばせてほしい」との話が舞い込む。ALSで寝たきりになった娘が秋田角館の旅行を依頼し、おかえりさんがその娘の代わりに旅をして、現地の満開の桜や人との触れ合いをビデオに録り成果物として持ち帰るというミッション。旅行代理店ならぬ旅代理人として、角館や玉肌温泉(乳頭温泉)を旅して、無事に成果物=ビデオを届け大いに喜ばれる。これを機に、社長が旅屋業を思いつき、NETで宣伝して顧客が増えていく。おかえりさんは根っからの旅好き人間で、旅さえしていればお金なんか二の次、といった素敵な人情豊かな女性。鉄壁社長もあれこれ煩いが、おかえりを大事にしている人。この小説には悪人は誰も出てこないのがよいところ。

20件の旅屋をこなしたところで、中止になったTV番組の復活の話がもち上がり、その条件としてスポンサー会社の会長の旅屋になるというミッションが持ち込まれる。簡単なミッションと思いきや、この旅で出会うべき人は、幼くして別れざるを得なかった妹の娘さんで、なおかつ鉄壁社長の元奥さん。おかえりさんは社長の許しもなく一人で愛媛県の小さな町に旅をすることになる。そこで会った姪御さんの真理子さんは素敵な女性ながら、会長にも鉄壁社長にも憎しみのような感情を抱いており、おかえりさんの旅屋としての本領が試されるのであった。

最初の旅屋のミッションにしろ、四国でのミッションにしろ、原田マハワールド全開の笑いと涙の人情劇が堪能でき、私の涙腺も止まりませんでした。

今日はこの辺で。