中山七里「帝都地下迷宮」

中山先生の政治政策批判をたっぷりと盛り込んだ作品「帝都地下迷宮」読了。

一見荒唐無稽のドラマ設定ですが、原子力政策や福祉政策への批判を盛り込み、舞台設定を度外視して読める小説。

主人公の区役所の公務員、小日向さんは鉄オタクの中でも超珍しい廃鉄駅オタク。東京には地下鉄網が網の目状に惹かれていますが、新線ができるたびに、乗り換えを効率化するための新駅ができ、そのために使われなくなった廃駅があるところまでは真実のようですが、銀座線の万世橋駅もそんな廃駅の一つ。何とかこの廃駅を見てみたいと思った小日向さんが、その廃駅で暮らす100人ものコミュニティーを発見。彼らは国の原子力政策の結果、事故の被害者となり、太陽光線の当らない暮らしを世議された人たち。彼らの仲間として認められた小日向さんが、殺人事件をきっかけに、彼らの救世主的存在となり、別の廃駅に移動していく話。小日向さんは区役所の生活保護担当者。中山先生には、生活保護問題を扱った傑作「護られなかった人たちへ」がありますが、本作でも生活保護への厳しい認定方針への批判を行っています。

本作での原子力は「もんじゅ」だと思われますが、被ばくして皮膚病を発症したというような事故はもちろん架空の話ですが、福島第一原発事故では、同じように避難を強いられた人が全国各地に広がっている状態は、非現実的ではありません。

最後に中山先生得意のどんでん返しがちょこっとありますが、読んでいると想定内で想像出来ました。

今日はこの辺で。