中山七里「ヒポクラテスの誓い」

サスペンスのベストセラー作家、中山七里のヒポクラテスシリーズ第一作「ヒポクラテスの誓い」読了。ヒポクラテスは、古代ギリシャの医者で、いわゆる西洋医学の父ともいわれる偉人。それまで医学は、迷信や呪術と深くかかわってきましたが、ヒポクラテスは医学をそれらを切り離し、臨床と経験を重んじ、更には倫理性と客観性を重視する科学へと導いた医者。そんなヒポクラテスを署名に持ってきたことからわかるように、本書は医者を主人公とした物語。それも、法医学専門の浦和医大教授、光崎藤次郎と、彼を取り巻く研修医や刑事の物語。5編からなる連作短編で、最後の作品で全4編と結びつく巧妙なストーリーを考えるところはころはさすが。

光崎教授は、良く出入りしている若い古手川刑事に、既往症を持つ支社だ出た場合は逐一報告せよと命じ、たくさんの解剖を行う。5編に登場する死者には、解剖しなければならないような不審死には該当しないものの、光崎の解剖によって、死の真相が明らかになる。医者として、生者も死者も差別することなく向き合うという信念のもと、真実を追求していく姿と巧みなストーリーテラーで、読むものを離さない魅力あふれる作品でありました。

今日はこの辺で。