浅田次郎「大名倒産 下巻」

浅田次郎先生の「大名倒産 下巻」読了。上巻では、隠居した仙台お殿様の計画倒産陰謀に気づいた当代お殿様が、江戸から領地の越後丹生山に駆け足で戻るまでを描きましたが、下巻はいかにして倒産を防いでお家を復興させるかのハイライト。上巻以上に期待したのですが、当代お殿様の活躍場面が少なく、七福神やら死神がやたらのたくさん出てきて、神頼み的なお家復興の様相が強く出ていたのは残念。それでも、浅田先生のユーモアのセンスと、稀代のストーリーテラーは薄れたとは言いませんが。

先ず復興の一助として出てくるのが、国家老の二家がため込んだ5,000両の寄進。3万石の大名で、国家老一家に3,000石、合わせて6,000石は大きな取り分、200年以上続けば相当の貯蓄ができるでしょう。幕末の一石は約1両、現在価値で75,000円程度で計算すれば、3,000石は225,000千円、かなりの金額。5,000両を寄進するとなると375,000千円。丹生山家の借金が25万両ということは、187億円の借金があったとはすごいもの。

次に出てくるのが殖産興業で、当代殿様の育ての親である間垣作兵衛が行った鮭の塩引き。絶品のお味ということで、江戸で2両で売れたことになっています。いかに貴重品とはいえ2両、15万円は高すぎ。したがって1両=75,000円はちょっと高すぎるので換算はいい加減。

丹生山に復活した鮭の塩引きも借金低減に貢献しましたが、いちばんは金山の発見。サルと暮らすような男が正直にも届け出てお家にとっては最高の光明。

お殿様は最後に借金している承認を集め、大口は半分返し、小口は全額返しのお沙汰。全額棒引きを覚悟していた商人たちは大喜び。めでたしめでたしのフィナーレ。でもすぐに大政奉還廃藩置県が来て、世の中はもっと大きく変わっていくのですが、小説はその前で終わったのでした。

今日はこの辺で。