東山彰良「流」

久々の小説、東山彰良氏の直木賞受賞作「流」読了。5年ほど前の第153回直木賞受賞ですが、選考委員9人中8人が◎、1人だけ〇のほぼ満点の評価だったことから、珍しく書店でハードカバー本を買い、読み始めたのですが、当時何か仕事でトラブルなどして読んでも頭に入らず、途中で投げていた作品。ところがコロナ騒ぎで図書館がどこも休館になり、本を借りることもできないので、ちっぽけな本棚から未読本を発掘し読んでみることに。

とにかく選考委員の評価は素晴らしいの一言。北方謙三氏は「近年では突出した青春小説」、林真理子氏は「スケールがあり(中略)これほどのエンタメど真ん中の小説は久しぶり」、宮部みゆき氏は「生き生きとした表現力(中略)全てにおいて飛びぬけた傑作」等々、皆さんが絶賛。これは読むしかないと思い買ったのでしたが。

東山さんは台湾で生まれ、幼少期を台湾で過ごし、9歳で日本に移ってこられた作家。この小説の舞台も台湾を中心に、日本、中国本土も出てきます。そういう意味では確かにスケールがあり、主人公が青年であることから青春小説でもあります。

台北に住む主人公の青年は、両親、祖父母の3世代の所帯。叔父さんと叔母さんも住んでいます。その家族に加え、青年の友達関係も多彩に描かれます。

話の大筋は、祖父が何者かに殺され、その第一発見者となった青年が犯人が誰かを探し出すというサスペンスの要素も持ち、祖父の経験した日中戦争国共内戦時の経験に青年が何となく縛られ、最後は犯人を探し当てることになりますが、純粋なサスペンスものではなく、あくまでも人間ドラマです。

私の感想ですが、選考委員の方たちが絶賛するほどには感動はしませんでした。一つには、人物が皆さん台湾人や中国人で、登場人物も多く、名前が中国読みのルビがふってあり、どうしても読みにくさがあります。その読みにくさと400pの長編ということで、池井戸作品のようにすらすらとはいかないところに理由があるのですが。

とにかく一読の価値はある作品に間違いはありません。

今日はこの辺で。