Netflixドキュメンタリー「ロングショット」

冤罪が奇跡的に晴らされた事件のドキュメンタリー「ロングショット」視聴。40分間という短さですが、アメリカの刑事司法の恐ろしさが凝縮されている作品。

全く覚えのない少女殺人事件の犯人とされた男性が、目撃者の証言によって描かれた似顔絵で逮捕され、その目撃者の証言を唯一の証拠として死刑か無罪かが決まる裁判に持ち込まれてしまうという恐ろしい実話。

目撃者は全く利害関係者がないながら、事件は夜間10時すぎに起きたもので、その証言だけで死刑になる可能性があること自体極めて恐ろしいこと。それでも検事は有罪を訴える。その前提には、警察への盲目的な信頼があることが想像され、冤罪の典型的なパターン。

そんな容疑者の無罪を証明したのは、彼がたまたまその夜にプロ野球観戦しており、その姿が、これまたたまたまTV番組の撮影をスタジアムで行っていた撮影班がおり、彼の姿をとらえていたという事実。検事はそれでも時間的に犯行可能性があると主張するが、これまたたまたま電話の通話記録が残っており、通話場所が特定されたことが無罪の決定的な証拠となる。この裁判は予審で、判事が陪審裁判にするか否かを決める前段階ですが、判事は無罪を言い渡して晴れて疑いが晴れることに。

警察官は目撃者の証言を誘導したとして左遷され、容疑者とされた男は市警を訴えて32万ドルの賠償金を得たことがエンドロールで紹介されましたが、死刑制度の残るカリフォルニアでは、1人殺害しても死刑が下されるようで、もしスタジアムの映像がなかったら、もし通話記録がなかったら、死刑判決が出ていた可能性もあります。

日本でも飯塚事件で、目撃証言が決定的な証拠となり少女殺人事件の犯人とされた久間さんが死刑判決を受け、死刑確定後2年で執行されてしまいました。久間さんと弁護団は再審請求準備中でしたが、2年で執行されるのは極めて異例なこと。現在奥さんが再審請求しています。

飯塚事件の目撃証言も、車両運転中にもかかわらず、極めて詳細な証言が作られており、誘導があったことは間違いないと言われています。目撃証言の不確実性については、各種実験で証明されており、目撃証言だけで判決を下すことの恐ろしさは、死刑判決でははかり知れません。

今日はこの辺で。