牧野雅子「痴漢とはなにか 被害と冤罪を巡る社会学」

竜谷大学犯罪学研究センター博士研究員の牧野雅子氏著「痴漢とはなにか 被害と冤罪を巡る社会学」読了。

書名の副タイトルを見て、痴漢冤罪に関する著作を思っていたらば、そうではなく、あくまで痴漢が日本ではいかに許容されてきたか、最近やっと痴漢犯罪性が強調されるようになったが、それでもまだ痴漢の被害が多くの女性を苦しめているという趣旨の著作。

かつては如何に著名人が痴漢を犯罪ではなく男性の本能のように語っていたかを、各市の雑誌での発言などを引用しながら訴えています。

事実か否かは定かではありませんが、お笑いタレント時代の東国原英男(そのまんま東)も雑誌「微笑」で、女性タレントとの対談で、痴漢をやったことがある旨話しているところに目が留まりました。本人に確認すれば、おそらくあれは雑誌の対談でそういうシナリオがあっただけと否定するでしょうが、事実であれば由々しきこと。逆に著者が事細かに雑誌記事を引用し、著名人の発言を引用していますが、これが世間一般の痴漢への許容を反映しているという論理も若干ン気にかかるところ。

冤罪については、周防監督の「それでも僕はやっていない」という痴漢冤罪映画が、痴漢被害者の実態を不透明にしたという印象を抱いているのも、女性研究者としての一面を示しています。

一つ言えるのは、痴漢は悪いことであり犯罪、そして痴漢事件で冤罪が起こってしまうのもまた、犯罪に近い大きな問題だということです。

今日はこの辺で。