真藤順丈「宝島 HERO’s ISLAND」

昨年、審査員の圧倒的な支持を得て直木賞を受賞した真藤順丈「宝島 HERO’s 

ISLAND]をやっと読了。540Pの大作、しかも難しい沖縄言葉がちりばめられた作品で、読むのに時間がかかりました。先週の良好にこの大作本を持参して、4日間で読もうとしたのですが、電車の中ではすぐに眠くなってしまい、旅館でも温泉と食事・お酒で読む時間がなく、100P読むのがやっと。帰宅して主に一昨日・昨日に集中して、一部ななめ読みでやっと読み終わった次第。

沖縄の1952年から1972年の日本返還までの20年間を3部に分けて描いた作品で、今の基地問題に通じる、沖縄の人たちの心が主人公の3人を通じて描かれます。

沖縄は、すでに勝敗が決していた1945年4月~6月にかけて、日本で唯一激しい地上戦が行われた地。20万人近い日本人の死者が出た壮絶な戦いが行われ、戦後はアメリカに占領されて1972年の返還まではアメリカの政権が支配したところ。沖縄の人たちが持つアメリカや日本本土の人に対する感情、今に至るまで続いていることが全編を通じて感じられます。

「戦果アギヤー」と呼ばれる、アメリカ軍基地内に侵入して物資を盗む仲間たち、オンちゃんと呼ばれる兄貴分と、グスク、レイほかが嘉手納基地に侵入し、大規模な窃盗作戦を行うところから始まり、結局失敗してオンちゃんがいなくなり、そのオンちゃんを慕うグスク、レイ、ヤマコの3人が主人公となって、彼ら3人の成長と心の葛藤を丁寧に描き、同時に沖縄が如何に米軍人や軍属の犯罪に苦しめられてきたか、それに対して本土は何もしてくれないもどかしさなど、今の辺野古発動に結びつく背景が描かれ、私たち本土人は、もっと沖縄の歩んできた歴史を踏まえて基地問題を考えなければならないことを示唆してくれます。いまだに事故などがあった時は地位協定などで日本の捜査権がないなど、変換時の「核抜き本土並み」が実現していない状況を、実はみんなが忘れているのではないかとつくづく思います。

主人公3人はオンちゃんの生存を信じ、その行方を追うのですが、オンちゃんは貴重なものを基地内から持ち出していたことが最後の明かされ、人間の尊厳を示してくれました。

真藤順丈さんは、東京生まれで沖縄とは縁がないようなのですが、よくここまで沖縄人の心を描けたものだと感心した次第。ホラー小説なども書いているようですが、候補1回目にしての直木賞受賞はお見事でした。

今日はこの辺で。